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空飛ぶキワモノ

美しいイタリアの色彩×鯖江の繊細技術から生まれたルーペ キッソオ ルーペ LS2-370 ブラックブロック メガネ素材のペンダントルーペ KISSO 鯖江矢内賢二『明治キワモノ歌舞伎 空飛ぶ五代目菊五郎』(白水社)

 キワモノという言葉を、現在、よい意味で使う機会はあまり多くないように思えます。
 正統に対する邪道、異端、鬼面人を驚かせる一発芸……といった具合で、その場限りの他愛ないものととらえられるのが一般的に思います。
 しかし、と、本項で紹介する書籍の著者矢内賢二は保留をおきます。

 しかしキワモノは、少なくとも日本芸能史においては由緒正しいテクニカル・タームの一つである。漢字で書くと「際物」。際は間際・瀬戸際の「際」だ。何か特定の時節・出来事にのぞんで、それをきっかけとして、時間的に隣接して、というような意味である。だから年末に売り出される注連飾りや門松のように、特定のイベントの直前の、ごく短い期間だけ価値を持つ商品のこともキワモノと呼ぶ。

 そして、本書のタイトルにもなっているように、キワモノは明治の前半期まで、歌舞伎とは切っても切り離せない関係にある単語でした。

 当時の歌舞伎では毎興行のように新作書き下ろし作品が上演された。つまり歌舞伎は「伝統芸能」ではなく、ほとんど唯一存在する「現代演劇」だったわけだ。劇場間ではシビアな客の奪い合いが演じられ、興行師も狂言作者も観客の気を惹くのに躍起になった。手っ取り早く注目を浴びるには、巷で話題のニュースや流行の風物をふんだんに盛り込んで、人気の役者に演じさせることだ。明治の新時代のこととて、あっと驚く事件や珍奇な新風俗には事欠かない。こうして同時代の、皆の好奇心の的になるような題材をタネにしてできあがった演目を、キワモノと呼ぶ。

 本書は現代では演じられることはもとより、研究者などによって語られること・かえりみられることさえ稀になった、明治のキワモノ歌舞伎を、その主な演者であった五代目尾上菊五郎の半生にも触れつつ紹介していく解説書です。

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日の出から睡蓮まで

西岡文彦『謎解き印象派 見方の極意 光と色彩の秘密』(河出文庫)

 輪郭線を用いることなく、大胆に色彩を散りばめ、対象を浮かび上がらせる描画。
 そんな堅苦しい説明をしなくとも、油絵や風景画といって、まずぱっと頭に思い浮かぶ絵、それが一般的には印象派的な作風と思っていただいてまずまちがいありません。
 モネやヌノワールに代表される、やわらかな陽光や波立つ水面のきらめきが、まさに印象的な絵画の、その成立と同時代的な評価と発展、そしてその後の時代への影響を解説していくのが、今回紹介する本書です。
 私もPixivにて「睡蓮」というシリーズを書いているもので、印象派については以前から興味はあったのですが(私のシリーズのモチーフは、大学時代の恩師の解説の受け売りです)、美術史はまったく専門外で、なかなかこれまでは手を出すタイミングをつかみかねておりました。それが表紙カバーのモネの「散歩、日傘をさす女」の、あまりに鮮烈なインパクトで、ついついそのままレジへと運んでしまっていたのですから、名画の力はやはり大きなものだといわないわけにはいかないかもしれません。

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ある一点を多くの目で




 友人のえいすさんが、Twitter上でこのようにつぶやいていらっしゃったところで、その時もいくらか返答させていただいたのですが、考えてみれば戦時中の庶民感覚というのも、あまり馴染みのないテーマだなと考えまして、思いつくままにちょっと書いていってみます。
 とは申しましても、実際の兵士にしても前線であったり基地勤めであったりと赴任先でその体験が千差万別であるのと同様、庶民生活も多岐に渡り、私の読めたもののうちからさらに絞っていては「あくまでも九牛の一毛的記録である。戦争体験は万人万様だ」という述懐を強くせざるをえません。
 ですので、まあ多量の情報網の末端の末端のサンプルのひとつ、気楽な読書ガイドくらいにお考えください。

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TRPG落語『インスマス長屋』(三遊亭楽天)のこと

 マスターと呼ばれる司会進行役の語る状況説明に対して、他の参加者も口頭でもって対応を告げ、必要に応じて決められたルールを適用してその成否を判定し、物語を進展させていく、御存知テーブルトークロールプレイングゲームです。
 日本に輸入されてそろそろ40年近くなったこの遊びも、現在にいたるまでには紆余曲折いろいろいろいろもうひとついろいろと、まあ本当に狭い業界にもかかわらず、たくさんの転変があったのですが、おそらく10年ばかり前の自分にいっても悪い冗談くらいにしか受け止めてもらえないだろう事実のひとつに、現在のこの界隈は「クトゥルフ神話TRPG」(「クトゥルフの呼び声」)を中心として動いているというものがあります。
 20世紀初頭の怪奇小説家H. P. ラヴクラフト創案によるクリーチャーや魔道書、異界言語をベースとした恐怖小説群をモチーフとしたゲームシステムは、一頭地を抜いて多くのファンを獲得しています。
 その結果として、現在、クトゥルフを代表格とする邪神などの名前は、驚くほどの認知を受けています。
 それは、落語のネタになるくらいに。

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ぱんあ22新刊情報


 来る6月23日(日)に東京の大田区産業プラザPiOで開催されます「ぱんっあ☆ふぉー!22」に参加いたします。
 というか、明日だ!
 ……すっかりイベント前の更新も滞り気味で申し訳ありません。

 配置はC-11「有滑稽」となります。

 今回の新刊は『雲はれて』。A5版36ページで予価500円です。


 無限軌道杯を間近に控える晩秋の一日、戦車道にて使用される砲弾の公開発射試験を見学するために赴いた青森県猿ヶ森砂丘で、西住まほは継続高校隊長ミカと再会を果たす。
 防衛装備庁の下北試験場に使用されているこの砂丘は、その年の全国高校生大会の2回戦で、黒森峰と継続がぶつかった試合会場でもあり、いくらかの懐かしさと緊張感を覚えつつ、まほとミカが久闊を叙し合っていると、突然、その砂の大地の自然が襲い掛かる。
 予測もしていなかった事態に、仰天するふたりに、追い打ちをかけるように、さらに異変は進行し、砂丘に面した海上、太平洋の上にぽっかりと浮かぶ城が姿を現していたのだった……

 前触れなく出来する異変、まほミカともに内心に秘めた悩み、冬を前にした北の地で、不思議が交錯する。
 という内容と同量か、それ以上に、まほミカさんの掛け合い漫才もたっぷり用意しております。

 表紙はいるかっとさん(TwitterPixiv)に描いていただけました。
 この光と影にいるふたりが、私の抱いていたまほミカにぴったり当てはまったんですよ。日向にいつつも影の掛かったまほと、影にたたずみつつも光を帯びつつあるミカ。これは本当にふたりを端的に表す、すごい一枚ですよ、本当。
 個人的に、ガーゴイルっていうスラッシュメタルバンドが好きでして、その『我意在』というアルバムに入っている「やがてひかる」という曲が、実に西住まほとミカというふたりにぴったりな内容なんですね。機会ありましたら、是非とも聴いてみてください。
 そして挿絵は鋸屋さん(TwitterPixiv)が引き受けてくださいました。
 風をまといハーモニカ吹くミカさんの、一見澄ましているようながら、喜び望み憂いなどといった様々な思いがこもった表情が素晴らしいです。さらに、ここでは見えないですが、全体像がまた最高なんですよ。しなやかながら豊かな全身の麗しさは、是非とも拝見していただきたいことろです。

 そんな完璧ともいえるおふたりの御助力をいただき完成した一冊です。
 まほミカさん好きな方も、そうでない方も、是非ともご一読ください!